2024年問題とは?
2024年問題は、働き方改革関連法により、ドライバーの時間外労働の上限規制が設けられることによって発生する問題を指します。この規制により、ドライバーの労働時間が減るため、企業の売上減少や運賃のアップなど、さまざまな影響が考えられます。2024年問題の対策を何も行わなかった場合、2030年には輸送できる貨物の量が約34パーセント減少すると言われており、9億トン相当の荷物が年間運べず、私たち消費者も当日・翌日配達の宅配サービスなどが受けられないことが懸念されています。問題に対応するためにも、物流業界が人材確保や業務効率化、問題の浸透などに努めることが重要です。
「1日何時間働けるのか?」
ー「原則として1日の拘束は13時間以内、上限15時間以内です。14時間を超える日は週2回までとしなければなりません。」
例外として、1週間の運行がすべて長距離かつ、一つの運行における休息期間が住所地以外の場合、当該1週間について2回まで16時間以内でも可能です。この場合も14時間を超える回数は週2回までにする必要があります。また、労働時間の上限規制に違反した場合、「6ヶ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金」という罰則が科せられる可能性があります(労働基準法第119条1項)。
ドライバーの労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されており、「物流の2024年問題」として取り上げられています。2024年問題によって、一人あたりの労働時間が少なくなるため、トラック業界ではトラックドライバーが不足しています。
どのように対策していくのか
デジタルツールの導入など業務効率を上げる対策が必要になってきています。主に、労務管理におけるドライバーの勤怠管理です。各ドライバーの勤怠状況を正確に把握し、時間外労働をはじめ労働時間の調整を行う必要があり、ドライバーの拘束時間や負担をかける「荷待ちや荷役」の時間の削減が求められます。ドライバーの一日の労働時間の約15パーセントが荷待ち時間と言われており、走行時間を短くすることができないため、待機時間・出発時間をコントロールすることが重要です。
また、日本の中心部にある愛知県が【物流ハブ】になり、輸送リレーを行うことでドライバー一人あたりの輸送時間を短縮できるよう対策している「名港ハブセンター」などもあります。
こちらのセンターでは、ジャストインタイムという必要な時に必要な量だけ輸送する物流システムを心掛けており、「トヨタ生産方式(ジャストインタイム)」と呼ばれる製造業で、部品の納入時などに使用される生産管理システムを物流に応用したもので、作業効率の向上やサプライチェーンの適正化が期待できます。
軽貨物配送業専門のマッチングサービス「ピックゴー」
2024年問題への対策として、様々な企業が改善に取り組んでいます。その中でも最近話題となっているのが「ピックゴー」です。ピックゴーとは、軽貨物配送業を専門としたマッチングサービスで、自分の好きな時間を有効利用して仕事したい人と荷物を届けてほしい荷主とをつなぐシステムです。仕事したい人、荷物を届けてほしい人のどちらにとってもメリットがあり、話題となっています。
ピックゴーが他の軽貨物配送より支持されている理由は、その単価の高さです。従来の軽貨物配送は、仕事した分だけが給料となり、個人事業主の場合1回数百円といった金額でした。しかし、ピックゴーは配達1回の料金が最低でも4000円という設定になっています。「自由に隙間時間に稼げる」というメリットがある一方、生計を立てる上でのデメリットも存在します。
ピックゴーの評判や口コミは多くありますが、一番多い口コミとしては「案件はエントリー制のため、稼ぐには経験やスキルが大きく関係してくる」ということです。案件が入りづらい地域や、エントリーしても落選してしまうなど、マッチングしない可能性もあるため、注意が必要です。「荷主と配送ドライバーをつなぐ。荷物を誰でも24時間届けてもらえる」というのは魅力的ですが、案件のエントリー制度による収入の日々の変動は、ドライバー側にとって懸念点となりそうです。
物流業界が取り組むべき課題
①人材確保
時間外労働の上限設定に伴い、一人あたりの売上が減少するため、売上や利益を維持・向上するには人材を増やす必要があります。そのため、人材確保に取り組むことが重要です。一方で、物流業界はドライバー不足が慢性化しており、他の産業と比べても有効求人倍率が高い状況にあります。人材確保のためには、自社の労働環境や労働条件を整備し、柔軟な働き方に対応できるようにすることが求められます。具体的には、長時間労働の是正、時短勤務制度など従業員のニーズに応じた働き方の提供、福利厚生の充実などが挙げられます。そのほか、女性や高齢者など幅広い人材が働ける環境を整備することで、人材確保につながるでしょう。
②国民一人一人の意識
自分の都合で何度も荷物の再配達をお願いしないようにするなど、再配達削減のために下記のようなアクションを心掛けましょう。
・宅配ボックスなどを活用した置き配を利用する
・配達状況の通知アプリを活用する
・宅配ロッカーやコンビニ受け取りを活用する
・荷物を送るときは、送り先の住所を正しく記載されているか確認する
2024年問題の解決に向けて、トラックドライバーだけでなく、荷主や配送荷物を受け取る側も対策していきましょう。