TOP> 基礎知識 コラム一覧> 長時間労働の要因となる荷待ち時間とは?

トラックドライバーの荷待ち時間は、物流業界の重要な課題の一つです。荷物の積み下ろしの待機時間が長引くことで、ドライバーの労働時間が延び、過重労働の原因となります。トラックドライバーといえば、拘束時間が長いことによる長時間労働のイメージが大きいのではないでしょうか。このようなイメージ通り、現在でも荷待ち時間は発生しているのか、どのような対策が取られているのかを紹介していきます。

義務化された荷待ち時間の記録

トラックドライバーの労働環境を改善する「貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令」を2017年7月1日に施行、乗務記録の記載を運送会社に義務付けました。ここでは、ドライバーが「車両総重量8トン以上、または最大積載量5トン以上のトラックに乗務した場合」を対象に、荷主の都合により30分以上待機した際に、乗務記録を記載するよう指示されています。乗務記録の記録内容は以下の通りです。

(1)乗務等の記録(第8条関係)

荷主指定の到着時刻(指定された場合)、集荷地点等への到着時刻 : 荷主側が指定した時刻と集荷地点に到着した時刻を記載する項目です。

・荷待ち待機の開始・終了時刻 : 荷主の都合によって実際に待機していた時間を記載します(30分以上待機していた場合のみ)。

・附帯業務の開始・終了時刻 : 運送業における附帯業務を行っている時間を記載します。附帯業務には荷造りや仕分け、運送代金に関わる主要手続きなどがあります。

・荷積み、荷下ろしの開始・終了時刻 : 荷積みや荷下ろしに必要とした時間を確認する項目です。

・集荷地点等からの出発時刻 : すべての作業が終わり出発した時刻を記載します。

(2)適正な取引の確保(第9条の4関係)

荷主の都合による集荷地点等での待機は、トラックドライバーの過労運転に繋がる可能性があり、輸送の安全を阻害する行為として取り扱われます。

特に注目すべきは「荷待ち待機の開始・終了時刻」です。この時間を詳細に記録し、合計が30分以上となる場合には、保管書類として会社に提出する必要があります。ただし、デジタルタコグラフ(デジタコ)など他の方法で記録している場合は、会社側で管理が可能なため、手動での記載は不要です。

このような記録を積み重ねることで、政府は運送会社やドライバーに過度な要求をしている荷主に対して勧告や是正指導を行うことができます。その結果、ドライバーの労働環境の改善が期待されます。

これにより、労働環境の改善と輸送の安全性が確保されると共に、業界全体の適正な取引が推進されることが期待されます。

改善・対策していくには

テクノロジーを活用した業務の効率化とモニタリングの導入は、現代のビジネス環境において不可欠な要素です。迅速かつ正確な意思決定を行うためには、先進的なテクノロジーを活用して業務プロセスを最適化し、業務の進捗やパフォーマンスをリアルタイムでモニタリングすることが重要です。

1. 動態管理システムの導入

リアルタイム監視
GPSなどのセンサー技術を活用し、保有する車両をリアルタイムで監視します。これにより、ドライバーの位置や状況を把握しやすくなり、遅延やトラブルの早期発見と対応が可能です。

配送ルートの最適化
データを活用して配送ルートを最適化します。これにより、渋滞回避や効率的なルート選定が可能となり、配送時間の短縮が期待できます。

2. ドライブレコーダーの活用

安全確保
ドライブレコーダーを取り付けることで、ドライバーの運転状況を記録し、万が一の事故時にも証拠を提供できます。また、運転の質を向上させるためのフィードバックにも活用できます。

労働時間の管理
ドライブレコーダーを通じて、ドライバーの休憩時間や労働時間を正確に管理することができます。これにより、過労運転の防止や適正な労働環境の確保が可能です。

3. デジタルタコグラフの導入

正確な記録管理
デジタルタコグラフは、走行距離や速度、運転時間などを自動的に記録します。これにより、手動での記録が不要となり、正確なデータ管理が可能です。

効率的なデータ分析
デジタルタコグラフのデータを分析することで、業務の効率化や改善点を見つけることができます。これにより、業務プロセスの最適化が図れます。

4. コミュニケーションツールの活用

リアルタイム連絡
ドライバーと荷主、管理者との間でリアルタイムのコミュニケーションを図るためのツールを導入します。これにより、状況の共有や指示の迅速化が可能です。

情報共有
配送の進捗状況やトラブル情報を共有することで、迅速な対応が可能となります。また、予期せぬ遅延や問題が発生した際にも、適切な対策を講じることができます。

これらのテクノロジーを活用することで、業務の効率化が図られ、荷待ち時間の削減が期待できます。結果として、ドライバーの労働環境の改善や、安全性の向上、そして業務全体の生産性向上につながります。

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